2013年11月29日
『ビリー・ミリガンと23の棺』(ダニエル・キイス)を読みました。私には、毒親に関してどうしても理解できないことがあります。
子供を虐待して、どうして平気でいられるのか?弱いものいじめのどこが楽しいのだろう?
本書を読んで、ビリー・ミリガンの言葉には、毒親のそうした性質を理解するうえで重要なヒントが含まれているかもしれない、と思いました。
Amazon.co.jp: ビリー・ミリガンと23の棺〈上〉 (ダニエル・キイス文庫): ダニエル キイス, Daniel Keyes, 堀内 静子: 本
Amazon.co.jp: ビリー・ミリガンと23の棺〈下〉 (ダニエル・キイス文庫): ダニエル キイス, Daniel Keyes, 堀内 静子: 本
◆閲覧注意のお願い◆
※記事には性的被害に関連した記述がありますので、閲覧注意です。
※読んでる最中に気分や具合が悪くなったら、読むのをやめてくださいね。
ビリーの24人の人格
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実話である。
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主人公ビリー・ミリガンは、幼いころ継父からの性的虐待始め、ひどい虐待を繰り返し受けたせいで、人格が分裂してしまった。
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大人になったビリーは人格を分裂させた状態で3人の女性をレイプしてしまった。
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ビリーの24人の人格には、以下が含まれる
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アーサー(22歳)。(自称)超インテリの人格。イギリス人。
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レイゲン(23歳)。(自称)カラテの達人で素手で便器を割れて武器のスペシャリストの人格。東ヨーロッパ人。
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デイヴィッド(8歳)。痛みを引き受け、リンチを受ける時出てくる人格。アメリカ人。
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殴られたり蹴らりたりするとき、外に出てる人格はデイヴィッド。
あまり聡明ではない各人格
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「頭がいい」はずのアーサーは、ちょっと目を離すとすぐマリファナを買ったり吸ったりする。
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アーサーは本当の意味で「頭がいい」とはいえないと思う。
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「強い」はずのレイゲンは、ちょっと目を離すとすぐ押し込み強盗をしたり、ウージーを発砲したり、人に暴力をふるう。
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レイゲンは本当の意味で「強い」とはいえないと思う。
分裂して生きることの弊害
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強固な役割分担でしか生きていない。
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誰か1人が継続してなにかを経験する、ということがない。
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一日のうち、2~3時間ごとに人格が交代するらしい。
- この人格交代システムを通して人生を生きると、その場その場さえなんとかうまく切り抜ければいい。
- おかげで、レイゲンのように何かの分野のスペシャリストとしての技能だけがぐんぐんつく。
- けれども、痛みを受けた経験がレイゲンにはない。
- だからレイゲンには、人の痛みや気持ちがわからない。
- それゆえ犯罪を繰り返してしまうのではないか。
- レイゲンのみならず、24の人格は、継続して誰かと信頼関係を結ぶことができない。
- これでは、人を信用することも不可能だろう。
- だから、社会も信用することができないし、目を離すとすぐに反社会的な方向に行ってしまうのかなぁ、と、思いました。
その場にあった人格を出すことができない
- ビリーは、政治に利用され、拘置所や精神病院で度々リンチを受ける
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罰やリンチを受けるときは、デイヴィッドなど年齢の低い人格が出てくる。
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それに対して私は素人っぽくこう思った。
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なんでリンチされてる時に8歳の人格を外に出すの?リンチされている時こそ、強いレイゲンを出せばいいのに。
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けれど、それこそが多重人格性「障害」とよばれる所以なのでしょうね。
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適材適所に表に出る人格をコントロールできるんだったら、人格が統合されているということだから。
向いていそうな職種
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表に出る人格をコントロールする能力があれば、必ず成功しそうな職種を考えてみた。
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役者(いわずもがな)。ホストなど接客業(客のタイプに合わせて出す人格を替える)。営業(客のタイプに以下略)
人格が統合されて人の痛みが分かるように
- 治療の甲斐あって、ビリーは1991年頃には、人格が統合されるようになっていた。
- こう言ったのが印象的だった(p326):
「虐待されると虐待するようになるってことを知りました(略)いまでは、ぼくがしたことで、彼女たち(ビリーがレイプした被害者)が一生苦しむことになるとわかっています。すごく申しわけないと思います。ぼくのせいで、彼女たちが小さな子供たちをいじめることになったら?(略)つまり、ぼくがまずチャーマー(ビリーを虐待した継父)を許さなければならないってことです。」 - 人格が統合されたビリーになって、はじめてレイプ被害者の苦しみに気づいた、ビリーにしか言えない言葉だと思った。
- 統合される前は、レイプの被害者3人が、一生苦しむことになる、ということに、ビリーは気づいてすらいなかったんだ……。と、心底ぞっとした。
- 統合される前のビリーは、人の苦しみや痛み、人の気持ちが、全くわからなかったんだな……。
- ビリーほどの重症じゃなくっても、人の苦しみや痛みがわからない人(毒親など)って、想像以上に沢山、世の中にいる
本書の前段『24人のビリー・ミリガン』
- 本書の前段にあたる『24人のビリー・ミリガン』
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- 多分、10年以上前に読んだと思う。
- 今回『ビリー・ミリガンと23の棺』で、旧友と再会できたようで嬉しい。
- 『24人のビリー・ミリガン』に続編があることでさえ、数日前に知ったばかり。驚いた。
- ビリーさんの裁判、1991年までやってたんだ……びっくり。てっきり70年代に完結した話なのかと思っていた。
結論
自分の欲望を満たすためなら他社を傷つけることになんの葛藤も感じない人(毒親のような)は実在する。ということをこの本は教えてくれる。
関連リンク
両親を買い換えよう!(シェル・シルヴァスタイン) - 大和彩ブログ
『まがお姫』と『隣の脅迫者』(スーザン・フォワード) - 大和彩ブログ