日本ではなぜ心理療法が発展しないのか?をDr.林から学んでみた

日本ではなぜ心理療法が発展しないのか?

昨日書いたエントリ:「いつになったら認めてもらえるの?」自己愛性パーソナリティ障害の母親を持つ娘の嘆き - 大和彩ブログの最後のほうで、こう書きました:

「余談ですが……この手の本は、日本では精神科医の著作がハバをきかせている気がするけど、アメリカではこのジャンルは主に心理学の博士によって書かれていますね~。(略)何が言いたいかというと、日本ではどちらかというと、精神科医が書いた本が多いような気がしますが、この違いはどこからくるのでしょうね?」その答えと思える一節をDr林のこころと脳の相談室に見つけました。

引用します。

このような治療(大和注:投薬ではなく、カウンセリングなどの心理療法)には、患者側の問題と、医者側(治療者側)の問題があります。


ここまで時間をかける覚悟を持って治療を受けるか。それが患者側の問題です。


そして治療者側にも現実的な問題があります。
このような治療は、膨大な労力の割に、カネにならないということです。


上記の論文の治療が保険診療だとしたら、このような集中的な精神療法を行なわず、抗うつ薬を処方すれば、その十分の一くらいの時間で、十倍くらいの収入にはなるでしょう。


精神療法(※大和注:ここではカウンセリング・心理療法と同じ意味です)を学び、実施するより、薬物療法を学び、実施するほうがはるかに収入になる。となれば、精神療法という分野が発展しないのは避けられないことです。 

【1948】7年前に父から受けた虐待の記憶がよみがえった より引用

 

なるほど!カウンセリングの多くは自由診療医療保険が効かない。そして保険が効かないということは、治療者にとっても、保険が効く場合の1/10の収入にしかならない。だから、心理療法を用いようという治療者は、日本には少ない。というわけですね。

腑に落ちます。

さらに、「保険診療」のリンク先で、Dr.林はこう書いてもいます。

精神療法やカウンセリングは、自由診療として行われている場合もあります。その場合の料金は一時間一万円くらいが相場です。とすれば上記の論文にあるような治療(※大和注:紹介されている事例はカウンセリングに137時間と150時間以上費やしている)は総額で100万円を超えます。一万円が相場ということは、一流の治療者ならもっと高いということです。すると総額は200万円、300万円、それ以上。それだけ支払っても受けたいという人だけがその治療を受けるということになります。 

【1948】7年前に父から受けた虐待がよみがえった より引用

 

ちなみにアメリカの健康保険は…… 

日本のように国民全員が健康保険に入れるシステムはアメリカにはありません。健康保険に入りたい人が自分で保険を選んでサービスを購入する仕組みです。

国民健康保険に対してみんな「高い、払いたくない」って言うけれど、アメリカの健康保険に比べれば、安価ですよ。

アメリカの健康保険なんて、一番安くても月10万からです。そして、月10万の健康保険でも、行ける病院は限定されています。もっと値段のはる健康保険に加入しないと、有名な病院や高名な医者にはかかれません。

それがアダとなって心理療法が発展しないのは残念ですが、私は日本の国民が全員健康保険に入る、という制度が好きです。

 

カネにならないクライエントとしての私

私、今かかっているカウンセラーにとっては、かなりカネにならないクライエントです……。カウンセラーさん、すみません。

同じカウンセラーのところに、既に8年かかっています。Dr.林おっしゃるところの「時間をかける覚悟を持って治療を受ける」姿勢だけは無駄にある、ということでしょうか……。

かかっているクリニックは保険診療ではなく、自由診療です。そして、相場の一万円よりもかなりお安い価格設定なんです。

一度、カウンセラーにこうお尋ねしたことがあります。

「こちらの価格設定、他のところより、かなりお安いですよね?」

カウンセラーは言いました。
「困窮してる主婦は、子供のおむつも買えないほど困っている。そんな人たち相手に、高いお金を取れない。安いTシャツ一枚買うのを我慢すればカウンセリングが受けられるという価格設定にしたかった。」

 

Dr.林の「保険診療」の文章を読んで、この度、改めて自分を受け持ってくれているカウンセラーを尊敬した次第でございます。