『最貧困女子(鈴木大介・幻冬舎新書)』を拝読しました 

『最貧困女子(鈴木大介幻冬舎新書)』を拝読しました。

以下写経に関して
  • 興味深く感じたところを写経させていただきます。
  • 自分の感想などは書いていません。
  • 引用と引用の間に関係はありません。単に興味を惹かれた箇所を抜き出しているだけです。
  • 引用中の“……”は、原文を省略したところを表します
 
『最貧困女子(鈴木大介幻冬舎新書)』

湯浅誠さんが「貧困と貧乏は違う」と発言していたことがある。……貧困とは、低所得は当然のこととして、家族・地域・友人などあらゆる人間関係を失い、もう一歩も踏み出せないほど精神的に困窮している状態。貧乏で幸せな人間はいても、貧困で幸せな人はいない。(p.49)

 

……ならばせめて生活保護の同行支援に繋げられないかと、シングルマザーの当事者互助手段などへのブリッジも試みたが、ことごとく失敗した。「相談をするには自分がこれまで売春で生き抜いてきたことを話さなければならないのでは?」という抵抗もあったが……(p.77)

 

『出会い系のシングルマザーたち』の中で、僕は彼女らの陥っている状態を「隠れ破綻」と表現した。彼女らは既に経済的にも精神的にも破綻してしまっているのだが、わずかばかりの金を……(p.79)

 

……売春ワーク(ワークとすら言えない状態だったが)に関与することで、やはり自ら社会の批判の対象となってしまっていた。ただでさえいまも世間には貧困状態にあるシングルマザーへの無理解と球団が満ち満ちている。(p.80)

 

セックスワークと貧困には、さらにもっと深い闇がある。……セックスワークの世界には彼女たちを「吸引」し、貧困の状態に固定していく構造があるのだ。(p.81)

 

……風俗業界には現状では適正価格がないが、これは女性の労働に応じた最低賃金の基準がないのがそもそもおかしい。……たとえば週5日出勤すれば「最低限文化的な生活が送れること」が保障される。これが「ワーク」というものだし、この最低賃金が出れば、風俗店は諸経費を計算した上で採算が合う適正価格が決められる……この状況を放置する限り、セックスワークはずっとアンダーグラウンド、違法に近い業態という認識から抜け出せず、スカウト会社はしょせん女衒集団、風俗店もしかりという状況から抜け出せない……(p.189)

 

建築・建設業界では2017年度に日雇い労働的な雇用でも年金や健康保険への加入を100パーセント義務づけることが決まり……(p.189)

 

セックスワークの社会化については……膠着に近い状態にある。ひとつの壁が、現状では性風俗店の経営は風適法風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)においては合法であるにもかかわらず、そこに女性を斡旋する業務(現状のスカウト業)は職業安定法で違法となっているという矛盾だ。(p.191)

 

まずセックスワークを正常化するためには、業としての性風俗を適正化するための取り決め(働く人の人権保護や関係法規の遵守、衛生規定など)を作らなければならないが、風適法は「そもそもいかがわしい業である性風俗業を規制する」という立法趣旨が前提にあるために、この法の中で新たに適正化の取り決めを作っていくことが大変困難だ。(p.191)

 

現状の性風俗業は許可制ではなく届出制であり、開業のための審査や「欠格事由」が存在しない。……だからこそ、現状では明らかに劣悪な環境で女性を働かせたり「正被害」と言っていいような現場に……(p.192)

 

つまり麻衣さんはセックスワーカー二世だったわけだ。そんな彼女を支援しようとする者が「性風俗は悪」と言えば、どう思うだろう。セックスワークそのものを否定することは、彼女の現在の人生と、彼女の母親も否定することになる。(p.194)

 

そこで既にセックスワークの社会化と支援者の意識改革が進んでいれば……稼げる女性はスカウト業者の本来業務である風俗店への斡旋をしつつ政党にサポートし、稼げないけど困窮状態にある女性や路上生活状態にある少女ならば支援者の手に繋げる。(p.195)

 

そもそも「逃亡者」として路上生活状態に入った少女らは、行政や福祉から完全に断絶した状態にある。……住民票住所は実家のまま。都市部にいれば運転免許も必要ないし、健康保険は知人から有償貸与してもらえばいいし、風俗業に勤めていれば確定申告はしないし納税もしない。(p.198)

 

幼児期に特定の愛着者のもとで育っていない、愛着者から正常な反応を受けてこなかったが故の、愛着障害なのだろう。彼女らは「限定した愛着者を作れない」。誰でも愛せるけど、誰も本気で愛せている気がしないのがつらいという。(p.202)