『最貧困女子 (鈴木大介・幻冬舎新書)』のアマゾンレビューを拝見しました

『最貧困女子 (鈴木大介幻冬舎新書)』のアマゾンレビューを拝見しました。

 

 

以下、レビューを抜粋、自分なりに系統に分けてみました。

1. セックスワークの過酷さに言及系
  • 性器に麻酔をしてまで……体を壊すレベルの話ではない。

2. 『最貧困女子』に登場する女性たちに手を差し伸べるには……?系
  • 生活保護は未成年の場合、申告ではなく国の義務にしないといけない。
  • 国が介入し、県が介入し、市や町が介入することでしか方法はないでしょう。もっとも救済の手が差し伸べられるべき人たちに「公的な福祉」の手も「自発的な救済」も差し出されていない現状
 3. 著者へのリスペクト系
  • 深く尊敬に値する著者である。
4. こんな現実があるなんて全然知らなかった系
  • (風俗業界で障害者の搾取がある事実や幼児期に性的に虐待された少女がいることなど)頭がクラクラくるほど信じられない現実がこの本に描かれています。
  • パラレルワールドで、ぜんぜん知りませんでした。

5. 「愛情」「さびしさ」系
  • (この本に登場する女性たちは)両親からの愛情というものを受けていないから、人を信用できない。

  • 『さびしい』こどもに、そっと隣にいるだけでよいから、寂しさをわかってくれる大人が身近にいる制度設計を早急にと願う。

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蛇足

ほんとに蛇足だけれど、各レビューの系統に関して、一応感想です。

1. セックスワークの過酷さに言及系

『最貧困女子』で私が一番感動したのは以下の箇所です

取材をした援デリ業者の中には、待機のワゴン車に「ウエトラ100本入りボックス」「個人輸入したキシロカインゼリー」を常備していたケースがあった。ウエトラ=ウエットトラストとは、スティック状の性器用潤滑ゼリー、キシロカインゼリーとは性器周辺にも使える局所麻酔薬だ。……それでも対処できずに常に性器から出血が……(p.183-184)

貧困になって生活保護申請する前、本気でこの業界で働くべきか検討していたとき、知りたかったのは、こういう情報だったんですよ。

本書を読んで「なんで風俗業界について書かれた他の本にはこういう情報が載ってないんだろう!?」と残念に思いました。

セックスワークする場合はこういう処置(ウエトラ・局所麻酔薬)が必要になることもあるよ」ってことを、当事者が仕事を始める前に知ってるのといないのとでは、大きく違うと思うからです。

こういう情報を知っててもなお「自分はこの仕事をやろう」と思える人は、セックスワークに従事すればよいし、「自分には無理」と思えばやらなければいい。

セックスワークにスカウト・勧誘される段階ではこんな情報誰も教えてくれないだろうから、広く女性にこの情報が広まるとよいのではないでしょうか。

2. 『最貧困女子』に登場する女性たちに手を差し伸べるには……?系

この件に関しては私もアマゾンレビューと同意見です。行政がきっちり【予算】をとって対応することが必須だと思います。

ただ、プロの介入が絶対不可欠だと思います。

プロというのは精神科医と臨床心理士など。虐待を受けて精神・肉体に後遺症を抱える人にどう接したらいいか、トレーニングを受けている人。プロじゃないと、支援したい側も、支援されたい側も、傷が大きくなるだけで逆効果な場合もあると思うからです。

素人が下手に関わって手に負える案件では、ないと思うからです。

 3. 著者へのリスペクト系

全く同意見です。上記「ウエトラ」の件の記載や鈴木大介さんの他の著作、どれも素晴らしいと思います。

『失職女子。』をウェブ連載していた最中、『家のない少女たち(鈴木大介宝島SUGOI文庫)』を読んで、ハッとさせられた箇所がありました。本書で一番といってもいいくらいひどい環境に生まれ育った少女が紹介されており、彼女は将来は「人の痛みが分かる人になるねん」と語っていました。

その頃やさぐれていた私は、「こんな小さい子ががんばってるのに私ときたら!」と己を恥じました。

『失職女子。』に出てくる「人の痛みが分かる人になる」という箇所は、実は『家のない少女たち』に出てくる少女へのオマージュです。

4. こんな現実があるなんて全然知らなかった系

この辺りから私の感想とアマゾンレビューの間に距離が生じ始めます。

個人的に「全然知らなかった」「信じられない現実」という感想が理解できなくて、そういう感想があること自体が私には信じられませんでした。

「えっ、みんなこういう生活じゃないんだ!?」と逆にびっくりしました。

本書に暴力的で衝動的な親が出てくる度に、私は「ああ、そうだよねぇ、うちの親もそうだった」と共感しながら読んだので……。

「そんな現実知らなかった」って言える人はいいなぁ、と羨むと同時に、自分の育ちの悪さを再確認しました。

5. 「愛情」「さびしさ」系

ここに至っては、私とアマゾンレビューさんの間の距離はグランドキャニオン級になっていました。

  • 両親からの愛情というものを受けていないから、人を信用できない。」というコメント自体、私には意味がよくわかりません……。私が、「両親からの愛情」というものを受けてないからだと思います。
  • 両親からの愛情」って、ナニ?これは皮肉で言ってるのではなく、ほんとうに全くイメージが掴めないので今後の人生の課題にしたいと思います。

  • 『さびしい』こどもに」←これは、たぶん、当事者には言わない方がいい言葉だろうなぁ……と思う。「あなたはさびしいのね」なんて言われた子は、果てしない絶望を感じて「この人には何も話したくない」と思うんじゃないかなぁ。なぜなら、私が「さびしい」という言葉の意味がわからないからです。「さびしくない子供・人なんているんだ!?」みたいな。

  • 別の本で「現代の家族関係はあまりにも『冷たい』」という内容を読みました。けれど、私はその意味もよくわかりません。私にとっては家族は冷たいのがデフォルトで、それ以外をイメージできないからです。
  • NHKなどの福祉特集でも「愛」「寂しさ」「冷たい」などのワードが出てくると、いつも失笑してしまい、鼻白んだ気持ちになりますね。」ーー大和談
  • 私はイメージがじつに貧困ですね。貧乏じゃなく、貧困です。