無職になって白猫白ちゃんに慰められた話

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今日、私は会社をクビになった。

昨日まで、私は普通の「会社員」として存在していた。

けれど今日から、もう私は「会社員」ではない。

 

私は何になったんだ?ああ、「無職」か。

 

昨日の「会社員」だった私と、今日の「無職」の自分。中身は変わらないはずはないのに、まったくの別人になってしまったような気がする。

 

会社からの帰り道、時間は深夜だった。ふと立ち止まって、自分の着ている黒いコートを見下ろした。ポケットがひきちぎれている。こういうところから、自分が無職だと全世界にバレてしまうのだろうか。道を歩いているだけで

「あっ、あいつ今日クビになったやつだぞ!」

と糾弾され、石でも投げられるんじゃないだろうか。

そんなばかばかしい考えに頭の中を占領されるくらいには、私は混乱していた。

 

クビの理由は、「特にない」と言われた。そのことが、私の混乱を一層深めた。

 

街灯もまばらな裏道を歩いて一人暮らしのアパートに向かって呆然と歩いていたところ、白くて暖かいものが私の足元にすりよってきた。

「ケケケケッ!ケケケケッ!」

馴染みの地域猫、白ちゃんだった。

 

白ちゃんは、私が会社から帰ってくると、いつも「ケケケケッ!」となきながら、アパートの近くで出迎えてくれる。このアパートに引っ越してきてから、それは平日の夜の儀式のようになっていた。

近所の目が怖いので、食べ物のやり取りは一切していなかった。

白ちゃんは私に「ケケケケッ!」と陽気にしゃべりつつけ、私は無言で白ちゃんの腰のあたりを肩たたきの容量でポンポンたたくといのが、お互いのコミュニケーション方法だった。それを通じて我々は友情を育み、はや数年が経過していた。

 

その夜は、めずらしく、私もしゃべった。

「白ちゃん。私、クビになっちゃった。」

「なにそれ?わかんないー!おしりぽんぽんして!」

「あのさぁ、私、昨日と顔、違ってる?」

「おんなじだよー!おしりぽんぽんして!」

「私、昨日と今日では、全然違う人間になっちゃったのかなぁ」

「あんたはきのうのよる、おしりぽんぽんした。おとといも、そのまえのも、そのまえもまえも、おしりぽんぽんした。きょうもぽんぽんでしょう?だから、あんたはおんなじひと!」

「そっかぁ……。ありがとう……。白ちゃん、今夜も、私のこと、みつけてくれてありがとね。」

「おんなじだよ!おんなじあんただよ!ぽんぽんして!」

「うん(ぽんぽんぽん)……ありがとう(ぽんぽんぽん)……

 

涙がぼたぼたこぼれて、白ちゃんの毛皮にいくつもいくつも吸い込まれていった。

そんな少々の水分が自分の体にかかったことなど一切気にせず、いつも通りに白ちゃんは「ケケケケッ!」と上機嫌でしゃべり続ける。私は、無言でぼたぼた涙を垂らしながら彼女の腰をたたき続けていた。ポンポン、ポンポン。

 

白ちゃん、今夜も、私のこと、みつけてくれてありがとね。