不 寛 容 な の は ど っ ち で す か ?

一旦閲覧制限解除して、「私」がブログを公開してコメントも受つけている背景を書きますね。

 

「私」は美大を卒業しています。

美大では、みんなスケッチブックを持ち歩いていて、日中、それに常に何か書き込んだりスケッチしていました。

 

例えば、授業中ちょっと退屈だとします。周りを見渡すと「私」と同じように退屈しているのか、クラスメイトの似顔絵をスケッチブックに描きこんでる子がいて、それがまたどえらく上手だったりします。

授業そっちのけでその子が落書きするのを、友達がゲームしているのを背後から眺めるのと同じように「私」は

「ほーーーー!」

と感嘆しながら見つめ続けます。

そして授業の休み時間、

「ねえねえあなたのスケッチブック見せて?」

と、いちどもしゃべったことのない、名前も知らないその子にお願いしてみたとしましょう。その子はきっと上の空でこう言ってくれます。

「ああ?いいよ。」

そしてわくわくとその子のスケッチブックを奪った「私」のせいで手持無沙汰になったその子は、そこにポイと放り投げてある「私」のスケッチブックに手を伸ばし

「あなたのスケッチブック見せて?」

と聞くかもしれません。

その子のスケッチブックを見るのに没頭している「私」は、その子と同じように上の空でこう言うでしょう。

「ああ?いいよ。」

 

☆☆☆☆

 

「私」の行っていた美大では、日常的にある風景でした。

相手がなんて名前で、どんな人かなんて関係ないのです。相手のことが好きかとか友達であるかとかも、関係ない。ただ、「スケッチブックとは、みんなで見せ合うもの」。そんな意識を共有していました。

 

「私」がブログを公開するのは、そんな感覚からです。

 

「私」は自分のブログは、スケッチブックだと思っています。文章や、アイディアの断片を書きつけたスケッチブックです。

文章は走り書きですし、決定稿ではありません。

 

そしてブログはあくまでも個人的な記録としてやっていることで、金銭を受け取って書いているものではありません。

要するに、ブログは、コモディティ(商品)ではありません。

金銭で流通させないものなのです。

金銭で流通させはしない。けれど、その代わりに、「あなたのブログ読みたい」という人がいれば「ああ?いいよ。」と気軽に見せるし、相手のブログも見せてもらうかもしれない。

 

☆☆☆☆

 

学生の頃はスケッチブックを見せ合っても、別に感想を言い合う義務はありませんでした。見終わったら、「ありがとう」と言ってそれを返せばいいだけです。けど、感想を言いたければ、言っても別に大丈夫。

 

それと同じで、「私」はブログを読んでくれて人に感想を書いてほしいとも思わないし、けれど、もし感想を書きたい人がいれば、書いてくれてもいい、というスタンスです。

 

何よりも自分のために書いているから、このようなスタンスになるんだと思います。

人のために書いてるんじゃない。

世の中に発信するために書いてるんじゃない。

ましてや、何かと戦うために書いてるのでも、ない。

 

スケッチブックごときで、どうやって世の中に発信したり、戦ったりするというのでしょうか?「私」には、そんな発想は全くありません。

 

☆☆☆☆

 

このように、学生の間では気軽に見せ合うスケッチブックですが、もし、学校外の、リアルの世界の大企業に勤める人に

「あなたのスケッチブック見せて?」

と聞かれたらどうでしょう。

「ああ?いい……ですよ?」

といつものぞんざいな口調を少し敬語に改めつつも、きっとそれまでの習慣から、見せてあげると思います。

そこまでは、いいのです。

 

けれど、「私」のそのスケッチブックを見た大企業の人が

「あなたの文章はなかなかだ。だからウチの出版物として印刷して、値段をつけて売ることにしたから。売上は、ウチのものね。」

と言ってきたら、どうでしょう?

「私」は血相を変えて、こう言うでしょう。

「やめてください!お願いです、そんなことしないでください!」

 

それに対して、大企業の人は、こう言うのです。

「ウチが出版することで、あなたの良いプロモーションになるじゃない。」

 

出版すると明言することで、「私」の心を一度殺した大企業の人は、

「あなたのいいプロモーションになる」

ということで、再度、「私」の心を殺すことに成功します。

 

2度、心を殺された「私」は、血を流しながら思うのです。

もう二度とスケッチブックをリアルの世界の人なんかに見せるもんか、と。

 

☆☆☆☆

 

フィクションだと思いますか?

人の心を傷つけたり、罵詈雑言を投げつけたり、そんなことはネットの世界だけの出来事ですか?

リアルの世界で、心が殺されるなんてことあるわけない?

ほんとうに、そうですか?

不 寛 容 な の は ど っ ち で す か ?