モラルハラスメントについて教養を得るため、本を読みました。
面白そうな本を探して出会ったのがこちら。
『星の王子さま】をモチーフに、モラルハラスメントについて分かりやすく書かれており、同時に、『星の王子さま』に関して長年疑問に思っていたことが、霧がはれたようにすっきり解消しました。
モラルハラスメントとは
本書によると、モラルハラスメントは、2段階を経て成立します。
1.虐待者が標的となった被害者の人格を破壊して支配下に置く過程
2.精神的暴力を振るう過程
この定義をもとに、星の王子さまがいかにバラのモラルハラスメントによってがんじがらめに支配され、ついには自殺に追い込まれていくかを本書は解き明かしてくれます。
そうです、モラハラは、死をもたらすのです。
親や配偶者や恋人のモラハラに悩んでいるあなた。
一刻も早く逃げて!ですよ。
星の王子さまが不気味だと思う理由
星の王子さまは大学のころに授業で読んだけど、さっぱりわかりませんでした。読まされたのがフランス語の原書だったから、ということだけが原因じゃない。
読んでて一瞬も心が休まらない物語なのです。
著者のブラックユーモアとか悪意が凝縮されているような小説……と思った。
そして、登場人物が全員不気味。
バラは性格悪いし、王子は情緒不安定で心配になるし、極めつけはキツネ。
「ねえ……ぼく(わたし)を飼いならしなよ!」
とまるで『まどか☆マギカ』のキュウべえのように迫ったかと思いきや
「けど、きみはバラに対して責任があるしね……」
などと言い出してチクチク王子を責める。
そうかと思えば
「大事なことは目に見えないのさ✨」
と名言っぽいことを言ってぷいっと王子と別れてしまう。
無駄なこと言って王子をかく乱するだけ……!ねえ、いっそのこと出てこないほうが良くない?このキツネ!?
性別不詳、敵なのか味方なのか分からない、キツネの存在はenigmaでしかないと私は思う。
学校のセンセイは
「この物語は実存主義的物語で著者サン=テクジュペリは実存主義者なのだ」
と解説してくれたけど、そもそも実存主義がよくわからないので、私のもやもやは晴れなかった。
なのに世間は美しい物語として星の王子さまを扱うから
なのに、著者・サン=テグジュペリによるイラストは妙にかわいい。
まるで著者が悪意を隠すために無邪気ぶってあえてかわいく描いたのでは、と勘繰りたくなる。
私は『星の王子さま』をかわいくあしらったファンシーグッズをみかけるたび、なんだか不穏な気持ちになるのだが、世間ではこの物語は「美しい」ということになっているので、そんなことを言ったら変人扱いされるだろうから黙っているしかない。
↓こういうやつ
安富歩氏の『誰が星の王子さまを殺したのか』
それらのフラストレーションが『誰が星の王子さまを殺したのか』を読んで解消されました。
キツネはセカンドハラスメントを行う世間を象徴しているというのが著者・安富歩氏の見解。これにとても納得した私は今、とてもすっきりした気持ちです。
そして王子をバラのハラスメントから救ってくれる羊🐑という存在がいたことに気づかされ、
「よかったね、王子、よかった……!」
と安心しました。これでもう王子を心配しなくてすみます。
ところで読み終わって気づきましたが、著者の安富歩氏といえば、女性装が話題になった方でもありました。それとは関係なく本書を拝読しました。
あとがき
藤田義孝氏によるあとがきも心に響いた。
本書が明らかにしたとおり、『星の王子さま』とは、けっして単なる美しい「愛=絆」の物語ではない。それどころか、「愛」や「絆」といった美しい言葉にこそ死にいたる毒が含まれるという警告を発する寓話であり、グリム童話のように本当は怖い『星の王子さま』なのである。
愛や絆こそが毒。
モラハラに苦しむ私たちにとって、これ以上の薬になる言葉がありましょうか。
身近な人からのモラルハラスメントで苦しむ人はぜひ一読をオススメする本です。