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『さよならタマちゃん(武田一義)』精巣腫瘍という睾丸のがんをつうじた生と死の考察 てきな

●『さよならタマちゃん武田一義)』

 『さよならタマちゃん武田一義)』を読み、完成度の高さにぶっとばされました。

 本書は作者の実体験をもとに描かれました。当時漫画家アシスタントの34歳。その若さで精巣腫瘍という睾丸のがん、発覚。しかも肺に転移までしていたためにきつい抗がん剤治療が必要でした。

 

 本書はその病気発覚~入院手術~退院までを描いた漫画作品です。

 

 最初は闘病記かと思い、手に取ったのですが、精巣腫瘍や手術のことはさらりと触れられているだけです。

 

 本書では、夫婦愛、仕事、夢を追いかけるということ、さらには病気のこと、それらが網羅されています。闘病記の枠には収まらない、もっと普遍的な生と死を絵テーマとした作品でした。

 

●自分のこと書くのは大変よ 

 こんな風に人さまのことだときつい病名もささっと書けちゃうことに我ながら驚きです。

 

 なぜなら私は去年、女性科疾患で入院・手術したのですが、病名・手術内容をいちいち書くと辛かった記憶が甦るので、あまり書けないからです。

 

  本書は「実体験をもとにした」、とありますが、体験をただ時系列で追ったものじゃありません。読んでみると作者が伝えたいメッセージを明確にするため、様々な体験をブレンドしキャラクターや各シーン、セリフを作り上げていることが分かります。

 

 自分の辛かった体験をこんな風に練り上げて作品に起こすのは本当に大変なこと。作者を心から尊敬します。漫画作家さんてすごいなあ!

 

 

 私が好きなシーンは退院間近、同室の人たちとカップめんを食べながら談笑する場面です。退院間近、日々の治療の辛さから解放されたひととき。外は秋晴れ、お祭りが開催されています。

 

 一見、他愛もない会話がのんきに交わされるのですが、バックに流れる太鼓の音がなんだか不気味な通奏低音となっています。

 

 最後まで読んでからまたこのシーンを読み返すと、この他愛ない言葉のやりとりに込められていた各キャラクターの複雑な心情が明らかになります。非常に効果的な演出だと思います。

 

 

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さよならタマちゃん武田一義講談社)』より