国民健康保険提出の時点ではまだ生活保護を申請すらしていませんでしたので、とにかく不安でした。
先ほどの職員さんが去ってからほどなく、ケースワーカーさん(ケース若尾さん)が現れ、私の生活保護申請はSTART!したわけです(詳しくは『失職女子。』参照ください)
その席でケース若尾さんにこう聞かれました。
「生活保護の申請がとおるかどうか、2週間ほど審査に時間をいただきますが、その間に通院のご予定はありますか?」
「あばばば(まだ動揺していた)明日行く予定だったんですが、保険証提出になったので……どっ、どうすればよいでしょうかあばばばば」
「それでは『臨時医療券』をお出ししますね~」
臨時医療券……どんなものなんだろう?
私は漠然と、デパートや百貨店の商品券のような、透かし模様の入った「オフィシャル感」のある券を想像していました。
しかしケース若尾さんが手渡してくれたのは、ただののA4用紙に「臨時医療券」と印刷してある、ガリ版印刷の香りがする非常に質素な用紙でした。
当然ながら透かし模様も、金色の特色印刷もなし。
「こんな私でも偽造できそうなもので、だだ大丈夫なのだろうか……!?」
けれど、ペラペラではあっても、役所の福祉事務所から発行された医療券であることは間違いないのだから、きっと大丈夫!
自分にそう言い聞かせ、翌日、かかりつけの病院で、バーン!と臨時医療券を提出しました。
病院の窓口のお姉さんは、怪訝な顔をしました。
「あの、これじゃないはず……ですが」
お姉さんはしきりに首を傾げています。
「ちょっと院長に聞いてきますね~。院長、院長!」
「どうしましたか」
と登場した院長も、「臨時医療券」を見てこう告げました。
「うーん、これじゃないねぇ。これは医療券じゃないな!!」
もう私は真っ青です。
「あっあのっ今、私、生活保護申請中でっ、これでいいって…役所の人がっ……。今日これで診察受けられなければ、診察代もじつはない状況なのですが……。」
そうなのです、そのときの私は限りなく無一文でした。診察代もお薬代も、なかったのでした。
「ああ、大丈夫ですよ、こちらから役所に電話しますからねー心配しないで。」
院長が私を笑顔で元気づけてくれました。
結局、病院から役所に電話が行き、専門的なことは私には分かるよしもないのですが、事務的な処理はなんとか行われたようでした。
私は診察と薬を受け取ることができました。
しかし、ひょっとしてかかりつけの病院に負担になるようなことになってしまったのでは?と気が気ではなく、
「すみません、本当にすみませんっ!」
とその日は何度も何度も謝る、「謝りアンドロイド」と化していました。
<つづく>