こちらは、昔、馴染みだった外猫白ちゃんの話。
白ちゃんは、「ケー」となく猫さんだった。
会社帰り、真っ暗な夜道を歩きながら白ちゃんの縄張りエリアに差し掛かる。
「今夜は、白ちゃんいないな……」
思いながら歩いていると、工事現場のブルーシートの下からぴょこっ!と顔を出す三角耳のふさふさした物体が。白ちゃんだ。
白ちゃんはにゅるにゅるとブルーシートの下から抜け出して、私のほうに駆け寄ってくる。
夜道で会うと、白ちゃんはいつも走ってくる。
なぜかいつも慌てて、走ってくる。
いつも慌てて走ってくるせいで、横隔膜が揺れ、なき声の「ケー」が
「ケケケケケ!」に変換されながら、走ってくる。
「そんなに焦らんでもよろしいがな」
思いながら、白ちゃんが駆け寄ってきてくれるのを、私は待っている。