ハイター
寝ぼけたままトイレに行ったら排水口のカビ取りに昨夜使ったハイターのボトルが目に入った。
けばけばしいデザインから普段は忌み嫌っている緑色のボトル。だがその時だけはとてつもなく魅力的に見えた。
直接唇をつけて中身を飲み干したらたまらなく美味しいのではないだろうか?
ハイターを飲むなんて考えたこともなかったし、もたらされる結果は私のあらゆる美意識や信条に反する。
なのにその一瞬だけはあらゆる理屈を超え
(アァきっとこれは飲めば幸せになれるもの凄く美味しい液体なんだサァ飲みましょう、エェそうしましょう……)
と思えた。
その瞬間
「それでも死ねはしないだろうよ」
頭に声が鳴り響き、絶望に襲われハイターも飲まなかった。