まさしく「ほっこり」の王道だねぇ。
ずっと読みたかったんだけど、ほんの去年くらいまで自分は実際に
「銀行のカードローン?それともアコム?プロミス?ほのぼのレイク?」
とギョロギョロ目を血走らせている状況だったので、怖くて読めなかったのだ!
主人公・丑島くんは、10日5割の「トゴ」もしくは一日3割の「ヒサン」で融資する闇金「カウカウファイナンス」を経営しています。この漫画は、「カウカウファイナンス」にお金を借りにくる人たちの物語を描いた漫画です。
私は女性なので、やはり女性が主人公のエピソードを読みたいのですが、男性がメインのお話が圧倒的に多いです。私としては残念ですが、男性誌で連載されているのでしょうがないですかねー。
■「若い女くん」
そんな中、1巻には女性が主人公である「若い女くん」が収録されています。元OLが風俗で働き、覚せい剤中毒になり……というプロット。
面白いです。ほっこりです。
けど、ちょっと残念なのが、この元OLである「若い女くん」が、徹底して女性のカリカチュアとしてしか描かれていない、という点です。「若い女性」というシニフィエ(←おっ初めてこの言葉を使えましたね!)に付随する記号でしか構成されておらず、人格をもったキャラクターとして描かれていません。「闇金なんかに手を出したらダメだよ」というメッセージを伝えるために、あえて「若い女性くん」は薄いキャラになっているのだと思います。
とはいえ、それを補って有り余るほど面白いので、これはこれでいいと思います。
■「フーゾクくん」
5巻・6巻・7巻で再度女性がメインのエピソードである「フーゾクくん」が展開されます。
こちらは、全員性格も営業スタイルも違うセックスワーカーが物語の中心です。3人とも、「若い女くん」とは違い、しっかりした人格をもった存在として描かれており、
「こういうのが読みたかったの~!」
と楽しく読みました。
私はそんな中でも、決してルックスはよくないけれど売上No.1の瑞樹さんを応援しながら読みました。瑞樹さんは、普通のワーカーならNGにするような社会不適合者を太い客である「エース」に育てる名手なのです。相手の要望を瞬時に察知して、客の心の隙間を埋めるような対応ができる人です。
そのせいか、作者は瑞樹さんをコマごとにちょっとずつ容貌を変えて描いているように見えます。薄暗い部屋で客と話す瑞樹さんは、照明のあたり方や髪の顔のかかりかたによって、まるで別人であるかのように描かれます。さらに自室にいるときの瑞樹さんは常にパックをしていて、顔が全く見えません。それは、決して客には本心を悟らせず接客するNo.1瑞樹の真髄を絵で表していて、素晴らしい演出だと思いました。漫画にしかできない演出です。
瑞樹さんは常に冷静で、他のワーカーにも優しく、貯金もし、
「私みたいにダメな親をもあったら、結局、頼りになるのはお金だけ。」
と言っていて、
「わかるよ瑞樹さん……!」
と私のシンパシーはマックスに。
しかしその結末は(ネタバレになるので書きませんが)。
一番、成功して最後は幸せになってほしいキャラクターだったのに……だったのに……。
「頑張っている人間が報われるとは限らない」
作者の容赦ないメッセージが読み取れる『闇金ウシジマくん』「フーゾクくん」編でした。