これからの社会では何も持たない人こそチャリティに参加して世の中を回していくのかも~『ニートの歩き方』(pha)読書感想~

「貧困にあえぐ日本の未来はどうなっていくと思いますか?」

生活保護制度をよくするにはどうすればいいと思いますか?」

ベーシックインカムについてどう考えますか?」

 

本を出版後、何度か取材していただく機会があったのですが、何度かこのような質問を受けて私は目を白黒させていました。

 

なぜ、私にそんなことを聞くのだろう……?

大学の先生とか、研究者とか、専門家とかじゃなきゃ答えられそうもない質問なのに。どうしてカイシャクビになった、ただの社会不適合者のワタシに聞くのだろう、一体、なぜ……?

 

しばらく考えた結果、昨日書いた記事のように、ひょっとしたら取材してくださった方々は、私がphaさんのようなニート生活を積極的に取り入れた人物であると勘違いされたのかなぁ?と推察したわけです。

 

そこでphaさんのご著書を拝読しました。

ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法』(技術評論社・pha)

 

すごーーーーーく面白かったです。冒頭の質問も、phaさんならいくらでも独自で面白い見解を答えられることでしょう(ベーシックインカムに関する考察も含まれてましたし)。

 

ニートという言葉のイメージが変わった

以前別のニート生活のススメ的な本を読んだことがあったのですが、それはあまり私には合いませんでした。ニートという言葉にもあまり良いイメージがありませんでしたが、この本を読んで少し変わりました。

 

phaさんが提唱している「ニート」とは、ライフスタイル、というか生活における心意気のようなもので、就業している・いないは、あまり関係ないようでした。

 

実際phaさんもいわゆる一般的な「ニート生活」とはちょっと違う暮らしを送っておられ、執筆やシェアハウス運営やプログラミングの仕事をされています。

 

ただし、自分のやりたいこと・楽しいことを犠牲にしてまで働くことはしない、という点は徹底。すると収入が月10万にも満たないかもしれない。けれどネットでゆるく仲間をつくっていれば、必要なものはタダでもらえたり、短期の仕事ももらえたりする。シェアハウスで暮らせば、仲間が常にいて助け合えるのでサイアク死ぬというリスクも減る。

 

そんなpha的「ニート」生活を紹介してくれつつ、さらには、アリやハチの生態から、「ニートとは、働いている人々の一部でもあるし、働いている人々だってニートの一部」という、壮大なスケールで日本におけるニートの存在意義さえ解説してくれる本でもあります。

 

シェアハウスへのイメージも変わった

私は、超絶・非社交的で内向的なので絶対そんな風には見えないとは思いますが学生時代はずっとシェアハウスに暮らしていました。10人くらいのルームメイトと一緒に暮らした経験があります。その経験は楽しかったし、自分のためになった面も多々あるのですが、中年になっても続けたいとはおもわなかったので今は一人暮らしです。

 

けれど、phaさんの運営される「ギークハウス」と名付けられたシェアハウスはちょっと暮らしてみたいな……と思ってしまうほど魅力的でした。

 

まず、猫飼われているんですよ!二匹も!私一人暮らしだし賃貸だし、猫飼えないんですけど、シェアハウスなら飼えるなぁいいなぁうらやましいなぁ、と。

 

さらに入居条件が「パソコンやインターネットが好きな人」なので、似たような傾向の人が集まる。気が向けば共用スペースで皆でゲームしたり、一人でいたければそこから少し離れたところで一人ネットをしたり、ツイッターのような人との距離感で共同生活を営んでおられるそうです。超絶非社交的な私でも、これはちょっと楽しそうかもと思いました。

 

今まで住んだシェアハウスは「家賃を安くしたい」以外に同居のモチベーションがない者同士の集まりだったので、「似たような傾向の住人が集まる」シェアハウスは住んだことがありません。なるほどこういうシェアハウスもあるのかー。と目から鱗でした。

 

ニートこそ弱者にやさしく

一人の人間がニートの一線に留まることができる期間は短い。僕もそろそろ支援する側に回るのかもしれない。この本を書くという作業も支援しているようなものだし。ニートが時間が経つにつれてニートを支える側に回り、そしてまた新たなニートが生まれていく、というサイクルが世界では回っているのかもしれないと思う。

ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法』(技術評論社・pha)より

 

自分で自分をニートと呼ぶ人は、社会に背を向けがちなのかと思っていましたがこの文章ではそれとは真逆なphaさんの想いが伝わってきます。

 

語り口がとても優しいのも本書の特徴だと思います。難しい言葉はあえて使わず簡単な言葉にしてある。小学生くらいでも簡単に読めるような著作を目指されたんだろうと思います。

 

若手の育成を気にかけていたり、小学生など社会的に力をもたない人々にも配慮が行き届いていたりと「ニート」といいながら、pay it forward精神に貫かれたこの一冊。「ノーブルズ・オブリージュ」というように、かつてはチャリティは金持ちがするものとされてきましたが、これからの社会では、何も持たない人こそが積極的にチャリティに参加して世の中を回していくようになるのかもしれません。

 

日本がたとえ貧困でありつづけても、phaさんが提唱される「ニート」精神が社会に広まれば、未来は明るいのかもしれない。そう思いました。